離婚が成立するまでの流れ

離婚を決意した場合、離婚の準備を進めていかなければなりません。

離婚は人生で何度も経験するものでもないので、離婚には大きく分けて3つの種類の離婚があることもあまり知られていません。ここでは3つの離婚の種類について紹介します。

離婚が成立するまでの流れは、以下に紹介するように①協議②調停③裁判という順に進んでいきます。

①で話がまとまらなければ②へ。②でもまとまらなければ③へ。という流れになります。

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1.協議離婚

協議離婚とは夫婦が互いに合意の上で離婚届を提出することにより成立する離婚のことをいいます。我が国の約9割が協議離婚といわれており、大阪府は全国で二番目に協議離婚の割合が高いです。協議離婚は公的機関を利用せずに夫婦の協議のみで成立してしまう離婚なので、その後、子どもとの面会交流や、養育費等の支払いが滞ったり、財産分与が適切になされないなどのトラブルが生じるリスクも高いという性質があります。

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2.調停離婚

夫婦の一方が離婚に同意しない場合、離婚したい側は家庭裁判所に申立てることで離婚調停を行うことができます。家庭裁判所では第三者として公平な立場に立つ調停委員が間に立ち、双方が納得できるような条件を提示して調停をまとめていきます。調停委員が間に立ってくれることで冷静に判断することができ、協議では合意に至らなかったが、調停にて離婚が成立したということも多いです。我が国の約1割が調停離婚によるものです。

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3.裁判離婚

調停離婚でも、相互に折り合いがつかず、調停が不調に終わることもあります。その場合、最終的には裁判で離婚するか否かの決着をつけることになります。離婚裁判をすれば、必ず決着がつきますが、弁護士費用や時間もかかります。また、理由を問わず離婚できるというものではなく、法律で定められた離婚事由というものが必要となります。離婚全体の約1%が裁判離婚によるものです。割合として少ないと言えるでしょう。

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協議離婚での弁護士の役割

協議離婚の時点で弁護士が関与するケースとしては一方の代理人として、相手方に対し離婚交渉を行うことがあります。相手が話し合いに応じてくれない場合や、納得できなかったり、不利な条件を提示されている場合は弁護士が代理人として交渉を行うことで、協議離婚に応じてもらえたり、有利な条件で協議離婚が出来る場合があります。

早い段階で弁護士に相談することで、弁護士からの助言を受けて、自己に有利な証拠収集が可能になることもあります。協議がまとまれば、後のトラブルを回避するために弁護士が公正証書での離婚協議書を作成することもあります。

また双方から公平な立場で協議離婚を調整する役割を任せられる場合もあります。離婚は単に夫婦関係を解消するのみではなく、それに伴い決めなければならないことが沢山あります。弁護士が公平な立場で調整に入ることで、漏れなく決定事項を定められたり、後のトラブルを回避しやすくなります。この場合も同様に、弁護士に公正証書での離婚協議書の作成を依頼しておくと安心でしょう。

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調停離婚・裁判離婚での弁護士の役割

調停離婚では、調停委員の面前で、自らの法的な主張を行う必要があります。感情論では話を進めることができないので、論理的に主張を積み重ねないと、気づけば不利な条件を提示されていたということも起こり得ます。

慣れない裁判所という場で、法的・論理的な主張を積み重ねるのは至難の業です。調停離婚において、弁護士は依頼者と共に調停の場に出席し、依頼者に代わり、または依頼者をサポートしながら主張を組み立てていくという役割を担っています。これにより、よく解らないまま調停が進むということも防ぐことができます。

また、裁判離婚では主張のみならず、証拠により主張を裏付けていかなければいけません。どのような主張をするか、どのような証拠で主著を裏付けるか、これは専門的な判断を要するものですので、およそ弁護士でなければ対応できないといえます。

また、手続きも複雑なため、この点も弁護士に依頼することで手続き的な負担から解放されます。

離婚に向けて話し合うべきお金の問題

離婚を決意した後に必ず話し合わなければならないことの一つにお金の問題が挙げられます。デリケートな内容なので、お互いに何となく曖昧にしてしまったり、離婚すること自体にはお互い合意しているけれども、お金の面で折り合いがつかず、なかなか離婚ができないといった状況もしばしば生じます。ここでは、離婚に向けて話し合うべきお金の問題について紹介します。なお、養育費についてはこのページではなく別のページで紹介することにします。

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1.財産分与

財産分与とは、結婚生活を始めた日から夫婦が協力して得た財産をどう分けるかという問題です。原則として結婚生活中に手に入れた全ての財産が夫婦共有財産となります。この夫婦共有財産を離婚に際してどのような割合でお互いに分けるかは協議により自由に決めることができます。もっとも原則として夫婦共有財産は2分の1の割合で分けられるべきでしょう。調停や裁判の傾向をみても2分の1で分与されることが多いです。分与の対象となるのは、現金、預貯金、不動産、自動車、株式、保険、将来の退職金等が考えられます。分与の対象かどうか疑問に思われたら弁護士にご相談ください。

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2.婚姻費用

婚姻費用とは、結婚生活を維持するために必要なお金のことをいいます。例えば、日常の生活費、医療費、交際費などです。婚姻費用は同居しながら離婚の話を進めている場合は問題になりにくいですが、別居しながら離婚の話を進めている場合に特に問題になってきます。原則として収入が多い方が低い方に対して支払うことになります。婚姻費用をいくら支払うかについても原則として協議により決めますが、その際、婚姻費用算定表を用いて決めるとお互い納得しやすいといえるでしょう。算定表の使い方が分らないといった場合はお気軽に弁護士にご相談ください。

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3.年金分割

年金分割とは、婚姻期間中の厚生年金について、夫婦で納付した保険料の総額を夫婦で分割することをいいます。年金分割ができるのは配偶者が会社員か公務員の場合であって、自営業者の場合はできません。あまり知られていない制度で、原則として離婚した日の翌日から数えて2年以内に請求しないといけませんので、離婚の際には忘れずに協議したいもののひとつです。もっとも夫婦のいずれかが専業主婦(主夫)の場合2008年4月1日以降に納めた保険料は、協議することなく2分の1で分割されます。それ以前の分は合意で分割することになります。

慰謝料

慰謝料は上記3つとは異なり、当然に請求できる性質のものではなく、夫婦のいずれかがした行為によって精神的苦痛を受けた場合に初めて認められるお金のことをいいます。離婚をすれば必ず慰謝料を請求できると理解している方も多いですが、これは誤解です。あくまで離婚理由となるような行為を相手がしたことによって精神的苦痛を受けた場合やその行為によって婚姻関係が破綻してしまった場合に認められるものと理解しておいてください。例えば、相手の浮気、暴力、性行為の拒否、ギャンブルによる浪費等は慰謝料請求が認められますが、性格の不一致による離婚の場合慰謝料請求は認められません。このように慰謝料は認められる場合の有無という点で上記の3つのお金の問題とは異なります。慰謝料の請求が認められる期間は損害と加害者を知ったときから3年になります。加害者は当然夫婦の一方ですが、浮気等の場合、浮気があったことをまで知った時点から3年以内の請求が必要になります。請求できる期間が長くないので十分に注意してください。

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お金の問題に関しての弁護士の役割

お金の問題はデリケートな性格を有するので、離婚に際してネックになってしまい、結局、離婚協議がまとまらないといったことがよくあります。このような場合に、弁護士は法律上認められる権利を正当に行使しつつ、相手方と交渉をすることでお金の問題を調整する役割を担います。また、お金の問題について相手から一定額を提示されたけれど、それが妥当な金額なのか分らない。といったような場合に、弁護士が提示額を精査します。もちろん、不当な金額であれば正当な金額を相手に提示していくことになります。さらに、どうしても協議でまとまらない場合は、裁判所を利用する調停や訴訟を起こしていくこともあります。このようにお金の問題に関する弁護士の役割は依頼者が本来受け取れるべき金額を不当に制限されないようにチェックし、制限されているのであれば、その制限を取り除く点にあります。お金の問題はデリケートであるからこそ、最初から弁護士に相談するというのが本来的な姿だといえるでしょう。

裁判離婚における離婚理由

「離婚が成立するまでの流れ」では裁判離婚は離婚全体の約1%であると紹介しました。もっとも協議も調停もまとまらなければ裁判離婚まで発展するケースも十分にあり得ます。裁判離婚になった場合、離婚理由がなければ離婚することができません。このページでは離婚理由について紹介します。

裁判離婚が認められるための理由には5つあります。その5つの理由は民法という法律の770条に書かれています。それぞれ見ていきましょう。

1.配偶者に不貞な行為があったとき。

これは最も分かりやすい離婚理由ですね。結婚している人が自らの意思で配偶者以外の人と性的な関係をもつことです。浮気や風俗通いなどが具体例です。この場合、離婚請求とともに浮気相手や配偶者に対して不貞慰謝料として損害賠償請求をしていくのが通常です。

2.配偶者から悪意で遺棄されたとき。

これは少し難しいですが、言い換えると、配偶者が結婚の義務を意図的に怠ったとき。ということです。結婚の義務とは次の3つのことです。

  1. 同居義務…夫婦が一緒に住む義務。
  2. 扶助義務…金銭的にお互いが同レベルの生活を送れるようにする義務。生活費を相互に負担することと考えていただければよいです。
  3. 協力義務…夫婦が互いに協力し、その生活を維持する義務。

上記義務に「悪意」つまり意図的に違反した場合に「悪意で遺棄」したことになります。

1の具体例としては、配偶者の同意を得ないで勝手に別居している。配偶者を虐待して追い出す。などが考えられます。

2の具体例としては、生活費を渡さない。渡しているとしても最低限度に足りていない。働ける能力があるのに働かない。生活費を趣味やギャンブルにつぎ込む。などが考えられます。主にお金の問題ですね。

3の具体例としては、家事・育児の放棄などが考えられるでしょう。

3.配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。

失踪や家出をして配偶者と連絡がつかず、3年以上生死が分らない場合です。現代社会では連絡を取ろうと思えば色々な手段がありますし、この要件は生死が不明でなければ認められないのでなかなか難しいです。失踪宣告という手段を採ることも考えられますが、現実的ではないでしょう。

4.配偶者が重い精神病にかかり回復の見込みがないとき

重い精神病とは例えば、統合失調症、認知症、双極性障害、重度の身体障害などが考えられます。他方、アルコール中毒、薬物中毒、ノイローゼ等はこれには含まれず、次の「その他婚姻を継続しがたい重大な理由があるとき」に含まれます。

この要件は一見すると配偶者が重い精神病にかかれば要件を満たすようにも読めますが、実際は相当厳しい判断がなされます。例えば、治療が長期にわたっていること、長期間献身的に看病をしてきた、離婚した場合、重い精神病に罹患した一方配偶者の生活の見通しが立つことなどです。

お互い縁あって結婚しているのですから、単に重い精神病にかかっただけでは離婚できないというのは納得しやすいことかと思います。

5.その他婚姻を継続しがたい重大な理由があるとき

夫婦関係は多種多様で、1から4までの離婚理由だけでは裁判離婚で扱える問題は非常に限定的です。そこで多種多様な離婚原因に対応すべく、この離婚理由が認められています。この理由についてはまた詳述します。

別居するその前に

離婚を決意してから、離婚の準備期間として別居をされる方が少なくありません。そして、別居されてから弁護士事務所へ相談に来られる方が多いのも事実です。一度別居してしまうと、別居前であれば容易に把握できた有利な事情も把握し難くなります。ここでは、別居するその前に把握しておきたいことをいくつか紹介します。

離婚に向けて話し合うべきお金の問題のページでは財産分与について紹介しました。財産分与をするにあたっては、夫婦共有財産の把握が必要になります。これは別居の前後で把握の難易度が異なりますので、別居前に把握するように努めましょう。弊所に相談して下さる女性の方は、夫に家計管理を任せていたので夫の財産を把握していない。という方が多いです。また実際そういった女性が多いのも事実でしょう。そのような方は特に別居前に夫婦共有財産を洗い出すのがよいです。では順にどのように把握するか見てみましょう。

相手方の収入

これは相手方がサラリーマンの場合は源泉徴収票、自営業者の場合は確定申告書の控えなどから把握できますので、コピーをとっておくとよいでしょう。携帯電話のカメラ等で撮影する方法でも問題ありません。

預貯金

これは、家族全員分のものを把握しておきましょう。可能であれば見開きのページをコピーしておくとよいでしょう。特に給与振込口座を把握しておくと、離婚後、養育費の不払いがあった際に差押え財産として有力な候補になるでしょう。

不動産

持ち家の場合、売却価格が残ローンを上回れば、財産分与の対象になります。そのため、不動産を購入した際の売買契約書、銀行で住宅ローンを組んだ際の金銭消費貸借契約書、返済予定表があればコピーしておきましょう。また登記識別情報通知(いわゆる権利証)もコピーしておくのがよいですが、名義が相手方の場合は無断で登記識別情報通知に付されているシールを剥がすのは控えたほうがよいです。シールがついたままでよいのでコピーしておきましょう。さらに、余力があればいくつかの不動産会社に査定してもらい最高価格を把握するようにしましょう。

保険関係

保険証書をコピーしましょう。その際、保険会社、保険の種類、契約者、受取人、保険料、満期、解約返戻金の有無などを併せて調べておきましょう。

有価証券

株式などの有価証券も分与の対象となります。証書などをコピーして銘柄、口数、購入価格、時価などを確認しましょう。もっとも、最近はネット証券会社の普及により証書がない場合も多いです。このような場合は日常の生活の中でそれとなく相手に聞き出したり、相手の話を注意深く聞くようにしてみてください。得てして株式取引などをする方は配偶者にその内容を話したがるものです。普段の会話の中にヒントが隠れているはずです。

借金(ローン)

借金(ローン)は財産分与の際、プラスの財産から借金を引いた分が分与の対象になることから、これも正確に把握しておく必要があります。毎月金融機関から送られてくる明細表などをコピーして残高を把握するようにしましょう。

不貞を証明する証拠

ここでは話題を変えて、夫婦共有財産同様、別居後は収集しにくい不貞を証明する証拠について少しだけ紹介します。詳細はまたの機会に紹介します。

SNSなど通話アプリ

法的に勝手に相手方の携帯の中身を覗き見てその内容を証言したり、写真を撮ったりすることは証拠として機能しない場合があると言われますが、悪質性が弱い場合は十分証拠となり得ます。気が引けるかもしれませんが、適宜の方法で証拠は保全しておきましょう。

写真フォルダ内の写真

これも上記と同様の問題が生じ得ますが、不貞を疑わせるような写真があれば適宜の方法で証拠保全しましょう。

まとめ

このページでは、夫婦共有財産の把握と不貞を証明する証拠については別居前に収集しましょうと述べてきました。これらはいずれも別居してしまうと相手が任意に開示してくれる可能性は低く、把握せずに別居を始めてしまうと、財産を隠されたり、証拠を隠滅され、本来請求できるはずの額の財産分与ができなかったり、不貞慰謝料の請求ができない事態に陥るおそれがあります。一刻も早く別居してしまいたい気持ちも十分に分かりますが、まずは冷静になり、必要な情報を収集するようにしましょう。詳細を知りたいという方はお気軽に弊所へお問合せ下さい。

別居したら、婚姻費用を請求しよう

別居後、離婚が成立するまでの間、夫婦のうち、収入が低い方(婚姻費用を請求できる権利がある者なので、こちらを「権利者」といいます。)から収入が高い方(婚姻費用を支払う義務があるので、こちらを「義務者」といいます。)に対して、婚姻費用の請求ができます。婚姻費用とは、別居後離婚成立までの間に一方配偶者の生活にかかる費用のことです。もちろん、夫婦の間に未成熟の子供がいれば、その子供の生活にかかる費用も婚姻費用に含まれます。他方、 養育費とは、その名のとおり、夫婦の離婚後、子供の養育のために負担される費用のことをいいます。 このページでは婚姻費用について少し詳しく紹介します。

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婚姻費用の取り決めは必ずしておきましょう

婚姻費用は原則として、夫婦間の協議によって取り決め、双方合意した額が支払われることになります。合意に従って離婚成立までしっかりと支払ってくれれば何の問題もありません。しかし、別居に至る夫婦間においては、そもそも婚姻費用について話し合う余地すらなく、特に取り決めもしなかったため、別居後、権利者の生活がたちまち立ち行かなくなることもよくあるケースです。このような状況にならないためにも、別居前に婚姻費用について、しっかりと取り決めておくことをお勧めします。実際に相談をうけるケースでも別居したはいいけど、婚姻費用を決めておらず、全く払ってもらえない。というケースが多いです。中には婚姻費用って何?と、ご自身の権利について把握しておられない方もおられます。取り決めがない場合、婚姻費用について詳しく知りたいという方は弁護士にご相談してみてください。

別居前に取り決めができなかった場合。

そうは言っても、やはり婚姻費用の取り決めがされないことも多く、このような場合は、別居後、夫婦間で話し合いの機会をもつことができる状況であれば、婚姻費用について話し合い、取り決めをすればよいでしょう。逆に、もはや夫婦間で話し合いできる状況ではないという場合は、弁護士を通して協議するか、家庭裁判所を利用し、調停、または審判により、婚姻費用分担請求を行っていくことになります。成立した調停や審判には強制力があり、義務者が婚姻費用を支払わない場合、強制的にこれを支払わせることが可能になります。もっとも、強制執行には専門的な知識も必要となってきます。何を差押えるべきか、手続きはどうすればよいか等、専門性が高いことに関しては、ご自身で判断されることなく、まずは弁護士にご相談ください。

調停?審判?どっちを選べばよいか。

家庭裁判所を利用して、婚姻費用の請求をしていく場合、調停又は審判によることが可能です。調停とは、調停委員に間に入ってもらい、いわば話し合いで婚姻費用の負担額について決めていくものです。他方、審判とは裁判官がその判断に基づき婚姻費用の額を決めるもので、話し合いとは赴きを異にします。いずれを選ぶのがよいかはケースによって異なりますが、調停の方が話し合いベースである分、婚姻費用の負担額について想定の範囲内の結論に落ち着くことが多いです。他方、審判の場合は裁判官の判断なので、想定外の結論(思っていたより高額、低額)になる場合があります。そうだとすると、まずは調停によることがベターではないかと考えます。もちろん、戦略により審判の申立から入る場合もあります。最後に少し触れますが、専門的な判断になりますので、迷われたら、まずは、弁護士に相談してみてください。

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調停には時間がかかる。
当面の婚姻費用を早急に確保するためには。

婚姻費用は、別居後、収入が低い権利者の生活の糧になるものであり、これがないと権利者はたちまち生活が立ち行かなくなる場合があります。調停は申立ててから少なくとも1ケ月後以降に開始されるので、これを待っていては権利者の生活が破綻してしまうという場合には、調停の申立と同時に、「調停前の仮払いの仮処分」を申立てます。これは、ありていに言えば、権利者の生活がひっ迫していると認められる場合に、調停委員や裁判官から、義務者に対し、調停が成立するまで権利者に婚姻費用を仮に支払うようにお願いしてもらう申立です。従わない場合は10万円以下の過料のペナルティが用意されているので、義務者が調停開始前に支払ってくれる可能性が高くなります。もっとも、直接強制的に支払わせる力はありません。あくまでお願いベースです。

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審判を利用する方が良い場合

先に、調停と審判どちらを選択すべきかという話では原則として調停がよいと説明しました。しかし、調停には時間がかかり、調停前の仮払いの仮処分も強制力がありません。やはり婚姻費用の支払いを確実にしてもらいたいという場合は、最初から審判を申立てるのがよいでしょう。なぜなら、審判の申立と同時に、強制力のある「審判前の仮処分」を申立てることができるからです。この処分により、審判が出る前であっても、義務者が婚姻費用を支払わない場合、権利者は義務者の給与等を差押えることができ、強制的に婚姻費用を回収できることになります。もっとも、審判なので、最終的に想定外の婚姻費用の審判がなされるリスクは否めません。ここはどのように考えるかで採る方法が変わりますので詳細は弁護士にお尋ねください。さらに、調停の申立は相手方住所を管轄する裁判所に申し立てることになりますが、審判の申立は申立人の住所地を管轄する裁判所に対して申した得ることができるので、ご自身と相手方が遠方で別居している場合には審判の申立をする方が、距離的な負担が少なくてすむというメリットもあります。この時、単純に審判の申立のみをすると、先に調停をしなさい。という判断が下り、結局相手方の住所地管轄の裁判所で調停をすることになりかねないので、審判前の保全処分も併せて申立てるのがセオリーです。手続的に難しい面もありますので、こちらも詳しくは弁護士にお尋ねください。