弁護士コラム

ChatGPTで法律相談して大丈夫?弁護士が答える限界と上手な使い方

2026.10.13
ChatGPTで法律相談して大丈夫?弁護士が答える限界と上手な使い方

最近、法律相談にいらっしゃる方から、「先にChatGPTに聞いてみたんですが」というお話を聞くことが珍しくなくなりました。

スマートフォンで気軽に聞けて、すぐに答えが返ってくるのですから、使ってみたくなるのは自然なことです。私は、AIを使うこと自体が悪いとは思っていません。むしろ、使い方しだいで、弁護士への相談はずっと実りあるものになります。

一方で、弁護士の立場から見ると、「ここに気をつけてもらえたら、もっと早く解決に向かえるのに」と感じる場面も少なくありません。この記事では、現場の弁護士が実際に困っていることを率直にお話ししながら、相談の前にAIをどう使えば得なのかをお伝えします。

 

結論:ChatGPTでの法律相談は「相談前の整理係」として使うのが得策です

先に結論を述べます。ChatGPTなどの生成AIは、弁護士に相談する前に、頭の中や手元の資料を整理する道具としては役に立ちます。一方で、「あなたの場合はどうなるか」という判断まで任せる相手としては、まだ危うい面があります。

・AIが役に立つ場面:出来事を日付順に並べる、法律用語の意味を調べる、弁護士に聞きたいことを書き出す
・AIに任せにくい場面:あなたの場合の見通し、証拠が足りているかの評価、期限(時効など)の確認、相手がどう出てくるかの予想

なぜそう言えるのか。以下で、弁護士が現場で感じていることと合わせて説明します。

「ChatGPTに聞いてから来ました」――弁護士が感じている3つの困りごと

先にお断りしておくと、これはAIを使った方を責める話ではありません。調べてから相談に来られる方は、状況を何とかしたいという気持ちが強く、むしろ前向きな方が多いと感じています。そのうえで、弁護士として正直に「ここが難しい」と思う点を挙げます。

困りごと① 資料が多すぎて、初回相談で見切れない

ChatGPTとのやり取りを印刷して、分厚い束にして持って来られることがあります。初回相談の時間は限られています。束を端から読んでいくと、本来お聞きすべき事実関係の確認に入る前に、時間がなくなってしまいます。

そこで私たち弁護士は、束の中から「結論を左右する部分」を探し出して、要点を絞り込みます。これは弁護士の大事な仕事のひとつです。ただ、最初から要点が絞られていれば、その時間を「見通し」や「どう進めるか」の検討に使えます。

困りごと② 持って来た本人が、内容をよく分かっていない

AIの回答は、もっともらしい言葉で、長く丁寧に書かれています。読んで「分かったつもり」になっていても、「この部分はどういう意味ですか」とお尋ねすると、答えに詰まってしまう方が少なくありません。

回答に出てくる用語や結論が、ご自身の状況にどう当てはまるのかが分からないまま、持って来られるのです。そうすると、相談の最初に、まずAIの回答を一緒にほどいていく作業が必要になります。

困りごと③ AIの質問は、深いところまで届かないことが多い

弁護士は相談を受けるとき、聞かれていないことをこちらから尋ねます。「その書類はいつ届きましたか」「署名はしましたか」「その後、相手と連絡は取りましたか」。答え次第で、結論が変わるからです。

私たち弁護士の実感としては、AIは、聞かれたことには整った答えを返してくれますが、ご本人が気づいていない大事な事情まで掘り下げて聞き返してくれることは、多くないと感じます。AIとのやり取りで質問の仕方が浅いまま終わっていて、肝心な事情が出てきていない。そういうことがよくあります。

たとえば、次のような場合です(実在の事件ではなく、分かりやすくするための架空の例です)。

Aさんは、亡くなった父親に借金があることが分かりました。AIに「相続放棄はできますか」と質問すると、「相続放棄は、原則として、相続の開始を知った時から3か月以内に家庭裁判所に申し立てる必要があります」という、正しい説明が返ってきました。

でも、Aさんが本当に知りたいのは「葬儀から半年たっているが、今からでも間に合うのか」「すでに父の預金を一部使ってしまったが大丈夫か」です。この答えは、いつ・何を知ったのか、そのあと何をしたのかによって変わります。ところが、こうした事情は、聞かれなければ出てきません。

ChatGPTで法律相談をするときの限界――AIが苦手なこと

ここで、AIに法律の判断を任せにくい理由を、4つに整理します。

書かれていない事情は、前提にできない

AIは、入力された情報をもとに答えを作ります。逆に言えば、入力されなかった事情は、考慮されません。

人は、自分に不利なことや、「関係ないだろう」と思ったことは、書かないものです。しかし、法律の結論は、まさにそうした事情で変わることがあります。弁護士は、相談者が話されなかった部分にこそ結論を左右する事情があり得ると考えて、質問を重ねます。

「証拠があるか」「期限はいつか」は、AIには確認できない

法律上は主張できることでも、実際に裁判などで認められるかは別の問題で、その分かれ目は多くの場合「証拠」です。LINEの画面、契約書、診断書といった現物を見なければ、その証拠がどれだけ役に立つかは評価できません。

期限も同じです。たとえば、次のように期限が決まっているものがあります。

・相続放棄:自分のために相続が始まったと知った時から3か月以内(民法915条1項。家庭裁判所に期間の伸長を求める手続もあります)
・不法行為(交通事故など)の損害賠償請求:損害と加害者を知った時から原則3年。人の生命・身体を害する場合は5年(民法724条・724条の2)

どちらも、「いつ知ったのか」という起算点がポイントになります。AIが期限に触れてくれても、あなたの場合の起算点まで確定してくれるとは限りません。期限の見落としは取り返しがつかないことがあるため、ここは人の目で確認する必要があります。

もっともらしい誤りが混じることがある

生成AIは、実在しない情報を、もっともらしく書いてしまうことがあります。海外では、弁護士がAIの作った存在しない裁判例を裁判所に提出してしまい、問題になった例が報じられています。

私たち弁護士がAIを使うときも、条文や裁判例は必ず原典で確認します。ご自身で使うときも、条文番号や判例が出てきたら、e-Gov法令検索などで実際の条文を確認してください。

入力した情報の扱いに注意が必要

弁護士には、職務上知り得た秘密を守る義務があります(弁護士法23条)。一方、AIサービスに入力した内容がどう扱われるかは、サービスの利用規約や設定によって異なります。入力内容が保存されたり、サービスの改善に使われたりする場合もあります。

相談内容をAIに入力するときは、次の点に気をつけてください。

・氏名、住所、電話番号、勤務先、相手方の個人情報は、「Aさん」「会社X」のように置き換える
・書類や画面の写真を、丸ごとアップロードしない
・入力内容を学習に使わせない設定ができるサービスもあるため、設定を確認する

相談前のChatGPTの上手な使い方5つ

ここからが本題です。弁護士に相談する前に、次のように使うと得をします。いずれも、AIの回答を「結論」ではなく「整理の材料」として扱うのがコツです。

① 出来事を日付順にまとめる

手元のメモやLINEの内容を貼り付けて、「事実だけを日付順にまとめて。私の感想や推測は別にして」と頼みます。

弁護士が最初に知りたいのは「いつ・誰が・何をしたか」です。事実と気持ちが混ざっていると、確認に時間がかかります。日付順にまとまっているだけで、相談の進みが大きく変わります。ただし、AIが日付や金額を勝手に補ったり、言い換えたりしていないか、必ず元の資料と見比べてください。

② 分からない法律用語の意味を調べる

「婚姻費用」「示談」「債務名義」など、聞いたことはあるが意味があいまいな言葉を、やさしく説明してもらいます。相談の場で用語の説明に時間をとられずに済み、弁護士の説明も理解しやすくなります。

ここで使うのは「一般的な意味の確認」までにしてください。「私の場合はどうなるか」の結論まで求めると、先ほど述べた理由で、ずれた答えが返ってくるおそれがあります。

③ 弁護士に聞きたいことを3つに絞る

不安に思っていること、気になっていることをすべて書き出し、「この中で、弁護士に最優先で聞くべきことを3つに絞って」と頼みます。

質問が多すぎると、肝心なことが後回しになります。「結局、自分は何を知りたいのか」が決まっていれば、弁護士も的確に答えられます。「何を聞けばいいのか分からない」という状態で来られる方は多く、ここを整理するだけで、相談の質が変わります。

④ 相手の立場から、どんな反論が出るかを想像してもらう

「相手の立場なら、どんな反論をしてきそうか」と聞いてみます。自分に不利な事情に早く気づけて、それを弁護士にも伝えられるからです。

ただし、これはあくまで想像です。実際に相手がどう出てくるかは、相手の性格や、相手に弁護士がついているかなどでも変わります。「こういう点を突かれるかもしれない」と気づくための材料として使ってください。

⑤ 持っていく資料の一覧を作る

手元にある資料を、契約書、LINEのスクリーンショット、診断書、請求書、裁判所や役所からの書類、というように一覧にしてもらいます。中身を判断させるのではなく、「何があるか」を整理するのが目的です。何が足りないかも見えてきます。

避けたい使い方

・AIの回答だけを根拠に、相手へ書面を送る、書類に署名する、お金を支払う:後から取り消せないことがあります。
・「大丈夫」と言われたからと、期限のある手続きを後回しにする:AIは、あなたの期限の起算点までは確認していません。
・AIに作らせた文書を、そのまま相手方や裁判所に出す:事実と違う記載や、存在しない条文が混じっているおそれがあります。
・AIとのやり取りを全文印刷して、「これを見てください」と渡す:要点が絞られていないと、かえって時間を使います(次の章で、持って行き方を説明します)。

法律相談に持っていくもの

初回の相談に持って行くと役に立つものは、次のとおりです。

・時系列のメモ(A4で1枚程度):事実だけを日付順に。前の章の①で作れます。
・聞きたいことを3つ:優先順位をつけて。
・資料の原本またはコピー:契約書、LINEやメールの画面、診断書、通帳、請求書など。評価の中心になるのは、AIの回答ではなく、こうした現物です。
・期限や期日が書かれた書類:裁判所からの書類、督促状、内容証明郵便など。封筒ごとお持ちください(届いた日の確認に使うことがあります)。
・AIの回答(お持ちの場合):全文ではなく、①AIに何と質問したか、②回答の中で気になった部分(2〜3か所)、③意味が分からなかった部分、に絞ってください。

AIで調べる前に、すぐ弁護士に連絡したほうがよいケース

次のような場合は、AIで調べ切ってから動くのでは遅くなることがあります。まず期限だけでも、早めに弁護士に確認することをおすすめします。

・裁判所から訴状や呼出状などの書類が届いた
・相手の弁護士や業者から、請求書や内容証明郵便が届いた
・家族が亡くなり、借金があるかもしれない(相続放棄の期限が関わります)
・交通事故に遭い、保険会社から示談の提示があった
・家族が逮捕された、警察から呼び出しを受けた

AI時代の弁護士の役割――「答えを出す」より「何が大事かを一緒に決める」

率直に言えば、一般的な法律知識を調べるだけなら、AIは大変便利です。弁護士の仕事も、これから影響を受けていくでしょう。それでも、相談の現場で私たちがやっていることは、これからも必要だと感じています。

・たくさんの情報の中から、結論を左右する要点を絞り込む
・お話に出てこなかった事情を、質問して掘り起こす
・証拠と期限を確認し、現実的な見通しと、取れる選択肢を示す
・ご本人が本当に望んでいること(早く終わらせたいのか、納得できる解決を求めるのか)を確かめ、それに合う方法を選ぶ
・守秘義務を負ったうえで、自らの判断に責任を持つ

AIは、整理と調べものの優れた道具です。ただし、最終的な判断と、その責任を負うのは人です。AIで整理した内容を持って弁護士と話す。それが、時間も費用も無駄にしない使い方だと私は考えています。

ChatGPTで調べた内容をお持ちの方も、はなぞの綜合法律事務所にご相談ください

当事務所は、東大阪と八尾で、離婚・相続・交通事故・債務整理・刑事事件など、幅広いご相談をお受けしています。

AIで調べた内容をお持ちの方も、もちろん歓迎します。全部を読み込む必要はありませんので、気になった点を教えてください。何から話せばよいか分からない場合も、時系列の整理から一緒にお手伝いします。

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※本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の事案についての法的助言ではありません。具体的な事案については、弁護士にご相談ください。

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